読書感想文:『スマホ脳』

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【著者プロフィール】
アンデシュ・ハンセン
精神科医ノーベル賞選定で知られる名門カロリンスカ医科大学を卒業、ストックホルム商科大学にて経営学修士MBA)を取得。王家が名誉院長を務めるストックホルムのソフィアヘメット病院に勤務しながら、有名テレビ番組でナビゲーターを務めるなど積極的にメディア活動も続ける。『一流の頭脳』が人口1000万人のスウェーデンで60万部が売れ、世界的ベストセラーに。前作『スマホ脳』は日本でも爆発的なヒットとなった。(新潮社HPより引用)

 

 

ASMRの聴き過ぎでうつ病になった男による脳科学本読書感想、第一回。
名著の内容をヒントにASMRが私の脳に与えた影響を探っていきます。

 

今回取り上げるのは『スマホ脳』。
本書は日本でもメチャメチャ売れてるので目にしたことある方も多いかもしれません。

 

スマホSNSが脳にどういった影響を与えるのかを最新の研究を元に解説してくれるという内容なんですが、無意識で行ってる自分の行動にどういった意味が込められてるのかが知れて勉強になります。

 

スマホとASMRという一見違った分野には見えますが、「依存性」「中毒性」「ドーパミンの分泌」という共通する性質の学びは自分自身の症状を理解する上で非常に参考になりました。

 

とりわけ面白かったのは、人間の体や脳の仕組みは我々が思ってる以上にまだ現代社会の生活に適応できていない、というもの。
人類は動物的な進化を続けてはいるものの、現代社会に適応できるほどの進化はまだしておらず、人の脳を理解する上ではあくまで狩猟採集を行っていた原始人をベースにして考えるべきだと言うんですね。

 

ストレス・恐怖・うつ病などのシステムも、そういった狩猟生活に合わせて設計されてるものであって、本来は命の危機を回避するためのもの。
それが現代社会の生活において必要以上に機能してしまうから問題だ、という話。

 

現に私に起こったうつ症状を振り返ってみると、食欲減退、記憶力の低下、ネガティブ思考、などがありますが、これはストレス環境(=命の危機)から逃れて、引き篭もって自分の命を守るようにプログラミングされてるから起こること、という訳です。

 

更にそこからドーパミンの役割について話は続きます。
ドーパミンというのは脳の重要な報酬システムで、快感や幸福感を得たり、意欲を作ったり感じたりと、人間の原動力になる脳内物質。
「お腹が減った」「セックスがしたい」「人に褒められたい」「本が読みたい」「スマホの通知を確認したい」などなど、人が行動を起こす際は必ずと言っていいほどドーパミンが分泌されて脳が快感を得てるんですね。
これは人間が生き延びるための術であって、何が重要かそうでないかを判別するための仕組みなんですが、このシステムは行き過ぎると依存症へと変わります。
例えば、スマホに初めて触れた人は全くそれに依存していない状態ですが、スマホを使用していくうちに「スマホを見れば新しい情報が手に入る」とドーパミン分泌によって記憶に定着していきます。
すると次第にドーパミンを得たいという欲求が増加していき、だんだんとスマホを気にする頻度も増え、依存状態になっていく、という流れ。
もちろんこれは食事や趣味、勉強なんかにも発揮されるものであり、ドーパミンが我々人間の習慣(=個性)を生み出している訳です。

 

ASMRも同様です。
「聴いてると気持ちよくなれる」という状態は当然ドーパミンが分泌されており、なおかつ進行性のもの。
生活上でASMRを聴く以上のドーパミン接種方法があれば依存の進行具合も緩やかだったんでしょうが、仕事の不調でストレスが増加していたこともあり、お手軽に大量のドーパミンを得られる方法として体がASMRを覚えてしまっていたのが去年の私だったのだと、今にして思うと感じます。

 

そして大量のドーパミンを得ているということは、脳は「これだけをやっていれば幸せ」と記憶するようになります。
そうすると相対的にそれ以外の行為の重要度が下がります。
当然ですね。わざわざ幸せから遠ざかる必要は無いわけですから。
おそらくですが、昨年10月ごろからあった思考力・記憶力の低下と、睡眠時間の増加はこのメカニズムが原因だったものと思われます。
ドーパミンの分泌が少ないイベントは軽視して、多くのドーパミンが得られるASMRを重要視するように脳の状態が書き換わったんですね。

 


では思考力・記憶力を低下させずにドーパミンを得る手段は無いのか。

 

この本によると、あるらしいです。
それは「運動」とのこと。
運動をすると凄まじい量のドーパミンが出るらしいんですね。
それこそスマホの通知を気にするのとは比べ物にならないくらい。

 

確かに原始人の生活に合わせたシステムで脳が動いてることを考えるとそれも必然。
元気に動き回れば動き回るほど快楽物質ドーパミンが出るのであれば、生存の確率も上がりますし、繁殖できるチャンスも増えます。

 

現にうつ症状が一番酷かった時も、あちこち歩き回ってヘトヘトになると気分が晴れました。
ちょっとした貧乏揺すりですら、やるとやらないとでは頭の回転に差が出ます。

 

また、運動によってストレス耐性もつくらしいんですね。
何かストレスが発生すると脳のストレスホルモンである「コルチゾール」が分泌され、うつの要因になる不快感を得ます。

 

運動に際してもこのストレスホルモンは一定量出て、ストレスが掛かった状態になるんですが、どうも運動を終えた後には以前よりもコルチゾールの分泌量が減るらしい。
これは運動以外のストレスに関しても言えることですが、要するにストレスへの「慣れ」。
慣れさえすれば嫌なことも苦もなくできると、そういうことです。

 

そして運動はストレスの負荷の量を調節できるし、コルチゾールを徐々に低下させるにはうってつけという訳です。

 


とても体育会系…というか脳筋的な話にはなりますが、「適度な運動」によって依存を減らし、ストレス耐性を上げ、ドーパミンを得られるようになる、というのが最先端脳科学による結論。
事実私もこの2週間軽いジョギングとウォーキングでかなり精神状態が安定してきたので、信憑性はかなりあります。

 

スマホ脳』、大変ためになる名著でした。